特許出願の非公開制度

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本制度の趣旨
本制度の概要
非公開の対象となる発明(保全対象発明)
保全審査の手続き
 1.特許庁長官による第一次審査
 2.内閣総理大臣による第二次審査(保全審査)
 3.保全指定
 4.保全指定しない場合の通知
 5.保全指定の解除等
保全指定の効果
 1.特許出願の取下げ等の制限
 2.保全対象発明の実施の制限
 3.損失の補償
 4.保全対象発明の開示禁止
 5.保全対象発明の適正管理措置
 6.発明共有事業者の変更
特許出願非公開に必要な取り扱い
 1.外国出願の禁止
 2.後願者の通常実施権
特許法等の特例
 1.優先権主張の効力の失効
 2.優先権主張における先の出願の取下げの特例
 3.出願審査の請求期限の特例
 4.存続期間の特例
 5.実用新案登録出願の特例
勧告及び改善命令
 1.内閣総理大臣による勧告
 2.内閣総理大臣による命令
報告徴収及び立入検査
 1.内国総理大臣による報告徴収等
 2.職員による立入検査
施行期日
特定技術分野と付加要件の概要
 1.特定技術分野の概要
 2.付加要件一覧
参考・引用文献

本制度の趣旨

 国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を 未然に防止する重要性が増大していることに鑑み、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する基本的な方針を策定するとともに、 安全保障の確保に関する経済施策として、特定重要物資の安定的な供給の確保及び特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度並びに特定重要技術の 開発支援及び特許出願の非公開に関する制度を創設することにより、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進することを目的とする 「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(経済安全保障推進法)(令和4年法律第 43号)が、 令和4年(2022年)5月11日に成立し、同月18日に公布されました。
 経済安全保障推進法に基づき創設された制度の一つが、「特許出願の非公開制度」です。

 特許制度は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とし、新規性及び進歩性のある発明について、 一定期間独占権を与えることで発明の保護を図るとともに、特許出願された発明を一律に公開することで、第三者による改良技術の開発の促進、 重複する研究開発の排除等により発明の利用を図ることを基本としています。
 一方、 これを安全保障の観点から見ると、たとえ安全保障上拡散すべきでない発明であっても、 その内容が公開されてしまうため、 外部から行われる行為に利用される事態を防ぐ術がなく、 また、かかる国益に配慮する発明者は、特許出願を自重せざるを得ない状況です。 この点、諸外国では、我が国以外の G7 諸国を含む多くの国が安全保障上の理由で特許出願を非公開とする制度を有しており、 G20諸国の中でもこうした制度を全く有していない国はわずかです。
 そこで、一定の発明分野・条件のもと、特許出願の非公開制度を創設することにより、特許出願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面 (以下「明細書等」という。)に、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が 記載されていた場合において、特許出願人としての先願の地位は確保しつつ、出願公開を留保するとともに、そのような発明に係る情報の流出を防止して、 外部から行われる行為に利用されるのを未然に防ぐことを可能にするものです。 また、本制度により、これまで安全保障上の観点から特許出願を諦めざるを得なかった者に特許法(昭和34年法律第121号)上の権利 を受ける途を開くこととしました。


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本制度の概要

 本制度は、特許出願に係る明細書等に、公にすることにより外部から行わる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが 大きい発明が記載されている場合に、「保全指定」という手続により、出願公開、特許査定及び拒絶査定といった特許手続を留保するとともに、 その間、公開を含む発明の内容の開示全般やそれと同様の結果を招くおそれのある発明の実施を原則として禁止し、 かつ、特許出願の取下げによる離脱も禁止するという制度です。


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非公開の対象となる発明(保全対象発明)

 本制度による非公開の対象となる発明(保全対象発明)は、以下の2つの要件を満たすものとされています(法70条第1項)。

① 特許出願に係る明細書等に記載された発明が「公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」であること

② そのおそれの程度及び保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情を考慮し、当該発明に係る情報の保全(当該情報が外部に流出しないようにするための措置)をすることが適当と認められること


 ①の「公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明」とは、 安全保障上の機微性が極めて高いもの、すなわち、国としての基本的な秩序の平穏あるいは多数の国民の生命や生活を害する手段に 用いられるおそれがある技術の発明が該当し、具体的には、以下の類型の技術発が想定されています。

(a) 我が国の安全保障の在り方に多大な影響を与え得る先端技術
 その新しさゆえ、用いる者や用い方によって、国家及び国民の安全に対する重大な脅威となり得る技術がこれに該当します。 例えば、武器のための技術であるか否かを問わず、いわゆるゲーム・チェンジャーと呼ばれる将来の戦闘様相を一変させかねない武器に用いられ得る先端技術や、 宇宙・サイバー等の比較的新しい領域における深刻な加害行為に用いられ得る先端技術などが挙げられます。

(b) 我が国の国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術
 その威力の大きさゆえ、我が国に対して用いられれば深刻な被害を防ぐことが容易でない技術がこれに該当します。 例えば、先端技術か否かを問わず、大量破壊兵器への転用が可能な核技術などが挙げられます。


 ②の「産業の発達に及ぼす影響」は、以下の3つの影響の観点から総合的に考慮する必要があるとされています。

(a) 特許出願人を含む当該発明の関係者の経済活動に及ぼす影響

(b) 非公開の先願に抵触するリスクに関して第三者の経済活動に及ぼす影響

(c) 我が国におけるイノベーションに及ぼす影響

 なお、「その他の事情」としては、例えば、対象となる発明の管理状況等、保全指定の実効性に関わる事情が想定されます。 すなわち、国家及び国民の安全を損なうおそれが大きく、かつ、産業の発達に及ぼす影響が少ない場合であっても、情報が既に広く知られており、 保全の実質的な意義が小さい場合には、保全指定をすることが適当とは認められることは困難です。


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保全審査の手続き

 「保全審査」とは、内閣総理大臣が、特許庁長官から特許出願に係る書類の送付を受けたときに、内閣府令で定めるところにより、 当該特許出願に係る明細書等に公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が記載され、 かつ、そのおそれの程度及び保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響その他の事情を考慮し、当該発明に係る情報の保全 (当該情報が外部に流出しないようにするための措置をいう。)をすることが適当と認められるかどうかについての審査をいいます(67条)。
 内閣総理大臣の負担軽減、特許庁における特許出願処理の遅延防止等の観点から、審査は、事前の特許庁長官による第一次審査と、 内閣総理大臣による第二次審査との2段階により行われます。 この2段階の審査の手続きの流れを図1に示します。

保全審査の手続きの流れ

 図1 保全審査の手続きの流れ


1.特許庁長官による第一次審査(法66条)

 特許庁長官が、形式的審査を行い、保全審査に付される特許出願であると判断した場合には、 その特許出願の日<注1>から「政令指定期間(特許出願日から3ヶ月を超えない範囲内において政令で定める期間)を経過する日までに、 その特許出願関係書類を内閣総理大臣に送付します(1、2項)。


<注1> 特許出願の日
 特許出願が次の表の左欄に掲げる出願である場合は、その出願日は、左欄の区分に応じてそれぞれ同表の右欄に掲げる日 (その特許出願が左欄の2以上の区分に該当するときはその該当する区分に係る右欄の日のうち最も遅い日)とします(4項)。

特許法36条の2第2項に規定する外国語書面出願 当該特許出願に係る特許法36条の2第2項に規定する翻訳文が提出された日(同条4項又は6項の規定により当該翻訳文が提出された場合にあっては、同条7項の規定にかかわらず、当該翻訳文が現に提出された日)
特許法38条の3第1項に規定する方法によりした特許出願 当該特許出願に係る特許法38条の3第3項に規定する明細書及び図面並びに先の特許出願に関する書類が提出された日
特許法38条の4第4項ただし書の場合(同条5項に規定する場合を除く。)における同条2項の補完をした特許出願 当該特許出願に係る特許法38条の4第3項に規定する明細書等補完書が提出された日
特許法44条第1項に規定する新たな特許出願 当該特許出願に係る特許法44条第1項の規定による特許出願の分割の日
特許法46条第1項の規定による出願の変更に係る特許出願 当該特許出願に係る特許法46条第1項の規定による出願の変更の日


(1) 保全審査に付される特許出願

① 「法66条1項本文に規定する発明」が明細書等に記載されている特許出願

 「法66条1項本文に規定する発明」とは、「特定技術分野」(公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の 安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明が含まれ得る技術の分野として国際特許分類 又はこれに準じて細分化したものに従い政令で定めるもの)に属する発明(その発明が特定技術分野のうち「保全指定」をした場合に 産業の発達に及ぼす影響が大きいと認められる技術の分野として政令で定める要件 (「付加要件」)に該当するものに限る)をいいます(図2参照。1項本文)。
 ただし、その発明がその発明に関する技術の水準若しくは特徴又はその公開の状況に照らし、 「保全審査」に付する必要がないことが明らかであると認める場合を除きます(1項但し書き)。 「明らかである」場合として想定されるのは、例えば、形式的に特定技術分野には該当するものの、 具体的な発明の性質に照らせば、技術の種類やレベルからして安全保障におよそ影響を及ぼさないことが明確な発明や、 それまでの内閣総理大臣とのやり取りから、明らかに保全審査に付する必要がない類型と確認できている種類の発明、 あるいは既に公開されていることが判明している発明などが想定されています。

  図2 法66条1項本文に規定する発明

 「法66条1項本文に規定する発明」は、原則として外国出願が禁止されているため(外国出願の禁止参照)、 「法66条1項本文に規定する発明」を外国出願する場合は、実質的に、日本を第一国として出願(第一国出願)することになります。 したがって、その特許出願がみなし特許出願(日本を指定国として含む国際特許出願)であるときは、保全審査に付される出願の対象から除外されます(5項)。

② 特許出願人から、特許出願とともに、その明細書等に記載した発明が公にされることにより国家及び国民の安全を損なう事態を 生ずるおそれが大きいものであるとして、保全審査に付することを求める旨の申出があった特許出願(2項前段)

③ 過去にその申出をしたことにより保全審査に付され、内閣総理大臣から保全対象発明となり得る発明の内容の通知を受けたことがある者 又はその者から特許を受ける権利を承継した者が当該通知に係る発明を明細書等に記載した特許出願(2項後段)

(2) 特許庁長官による求めによる特許出願人による資料の提出、説明

 特許庁長官は、その特許出願に係る書類を内閣総理大臣に送付をするかどうかを判断するため必要があると認めるときは、 特許出願人に対し、資料の提出及び説明を求めることができます(6項)。

(3) 拒絶査定、特許査定、出願公開の保留(7項)

 下記の期間が経過するまで間は、審査官による拒絶査定・特許査定、特許庁長官による出願公開はされません(7項)。

① 特許庁長官がその特許出願に係る書類を内閣総理大臣に送付する場合に該当しないと判断し、 若しくはその送付がされずに「政令指定期間」が経過するまでの間

② 内閣総理大臣が下記の通知をするまでの期間

(a) 内閣総理大臣が、保全審査の結果、保全指定をする必要がないと認め、特許出願人及び特許庁長官へのその旨の通知

(b) 内閣総理大臣が、保全指定を継続する必要がないと認め保全指定を解除し、又は保全指定の期間が満了し、 指定特許出願人及び特許庁長官へのその旨の通知

(4) 特許出願人への通知

 特許庁長官が、特許出願関係書類を内閣総理大臣に送付したときは、その旨が特許出願人に通知されます(3項)。

(5) 特許出願の放棄・取下げがあった場合の措置

 特許庁長官は、下記のいずれかのときは、その旨を内閣総理大臣に通知しなければなりません(8項)。

(a) 第一次審査の終了後、内閣総理大臣からの保全指定の通知(70条1項)又は保全指定をしない旨の通知(71条) を受けるまでの間に特許出願の放棄又は取下げがあったとき

(b) 第一次審査の終了後、内閣総理大臣からの保全指定をしない旨の通知(71条)又は保全指定解除若しくは保全指定期間満了の通知 (77条2項)を受けるまでの間に、特許出願後における特許を受ける権利の承継(特許法34条4項) 又は特許を受ける権利の相続その他一般承継(同5項)があったとき

(6) 特許出願を却下する場合の措置

 特許庁長官は、第一次審査の終了後、内閣総理大臣からの保全指定をしない旨の通知(71条)又は保全指定解除若しくは保全指定期間満了の通知 (77条2項)を受けるまでの間に、特許出願を却下するときは、あらかじめ、その旨を内閣総理大臣に通知します(9項)。

(7) 第一次審査により内閣総理大臣への送付しないと判断した場合の措置

 特許庁長官は、第二次審査のために内閣総理大臣に送付をする場合に該当しないと 判断した場合において、特許出願人から内閣府令・経済産業省令で定めるところにより申し出があったときは、 特許総理大臣への送付をしない旨の判断をした旨の通知が特許出願人にされます(10項)。

(8) 政令の改正があった場合の経過措置

 政令の改正により新たに非公開の対象となった発明を明細書等に記載した特許出願が、その改正の際に特許庁に係属しているときは、 第一次審査の対象から除外されます(11項)。


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2.内閣総理大臣による第二次審査(保全審査)(法67条)

 特許庁長官による第一次審査の結果、内閣府に送付された特許出願について「保全指定」を行うか否かについて検討し、決定します(1項)。
 なお、保全審査の期間については、法律上規定されていませんが、外国出願の禁止が特許出願後最大10ケ月までの期間(外国出願の禁止の2の例外②参照)と規定されていること(78条1項但し書き)から、 実質的には、この期間内に保全審査を終了する必要があります。

(1) 特許出願人その他関係者からの資料の提出、説明

 内閣総理大臣は、保全審査のために必要があると認めるときは、特許出願人その他の関係者に資料の提出及び説明を求めることができます(2項)。

(2) 国の機関による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力

 内閣総理大臣は、必要な専門的知識を有する国の機関に対し、保全審査に必要な資料又は情報の提供、 説明その他必要な協力を求めることができます(3項)。

(3) 国の機関以外の者による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力

 国の機関による協力では十分ではないときは、内閣総理大臣は、国の機関以外の専門的知識を有する者に対し、 必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができます(4項前段)。
 この場合、以下の措置が行われます。

(a) 当該専門的知識を有する者に発明の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、 当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならないこととされています(4項後段)。

(b) 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。) に明細書等に記載されている発明の内容を開示することができますが、その者に対し、あらかじめ、 開示された対象発明の内容についての秘密漏洩・盗用の禁止義務のあることについて説明した上、 当該開示を受けることについての同意を得なければならないこととされています(5項)。

(4) 関係行政機関の長との協議

 内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議することができます(6項)。
 協議を受けた関係行政機関の長が協議に応ずるための十分な資料又は情報を保有していないときは、 内閣総理大臣は国の機関以外の専門的知識を有する者に対し、 必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができます(7項)。
 なお、この場合、前記(3)における(a)、(b)と同じ措置が行われます(7項準用4、5項)。

(5) 国の機関の職員等の秘密漏洩・盗用の禁止義務

 保全審査に関与する国の機関の職員及び国の機関以外の者で発明の内容の開示を受けた者は、正当な理由がなく、 当該発明の内容に係る秘密を漏らし、又は盗用してはならないこととされています(8項)。

(6) 特許出願人の意思確認手続

① 内閣総理大臣からの保全対象発明の内容の通知(予告通知)
 内閣総理大臣は、保全指定をしようとする場合には、特許出願人に対し、保全対象発明となり得る発明の内容の通知(予告通知)をします(9項)。

② 出願人による所定の書類の提出
 保全対象発明の通知を受けた特許出願人は、特許出願を維持する場合には、予告通知を受けた日から14日以内に、 次に掲げる事項について記載した書類を提出しなければなりません(9、10項)。

(a) 当該通知に係る発明に係る情報管理状況

(b) 特許出願人以外に当該通知に係る発明に係る情報の取扱いを認めた事業者がある場合は、当該事業者

(c) 上記(a),(b)に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項

③ 出願人から提出された書類に対する補正
 内閣総理大臣は、出願人から提出された書類の記載内容が相当でない認めるときは、特許出願人に対し、 相当の期間を定めて、その補正を求めることができます(11項)。

(7) 予告通知に係る発明の公開禁止

 特許出願人は、予告通知を受けた場合は、保全指定の通知又は保全非指定の通知を受けるまでの間は、 特許出願を放棄し、若しくは取り下げ、又は特許出願が却下されたときを除き、保全対象発明の内容を公開してはなりません(68条)。

(8) 保全審査の所要期間

 法律上、保全審査の所要期間の制限はありませんが、外国出願の禁止が、特許出願後10ヶ月で自動的に 解除されるため(「特許出願非公開に必要な取り扱い 1.外国出願の禁止 (2)②参照) (78条1項、政令15条)、実質的には、このき期間内に保全審査が終了することになります。

(9) 保全審査の打切り(69条)

① 打ち切りの理由
 下記のいずれかに該当するときは、内閣総理大臣は保全審査を打ち切ることができ(1項)、 打ち切るときは、あらかじめ特許出願人には、その理由を通知され、相当の期間を指定して、 弁明を記載した書面を提出する機会を与えられます(2項)。

(a) 特許出願人が予告通知を受けた日から14日以内に所定の書類を提出せず、 又は提出した書類の補正を指定期間内に行わなかったとき

(b) 予告発明に係る発明の公開禁止に違反したとき

(c) 不当な目的でみだりに、特許出願とともに、その明細書等に記載した発明が公にされることにより国家及び国民の安全を損なう事態を 生ずるおそれが大きいものであるとして、保全審査に付することを求める旨の申出をしたと認めるとき


② 打ち切り後の措置
 内閣総理大臣は、保全審査を打ち切ったときは、その旨を特許庁長官に通知し(3項)、 内閣総理大臣からの保全審査打ち切りの通知を受けた特許庁長官は、特許出願を却下します(4項)。


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3.保全指定(70条)

(1) 保全指定と通知

 内閣総理大臣は、保全審査の結果、明細書等に記載された発明を保全対象発明として指定したときは、 特許出願人及び特許庁長官にその通知(保全指定通知)をします(1項)

(2) 保全指定期間

① 最初の保全指定期間の定め
 内閣総理大臣は、保全指定をするときは、当該保全指定の日から起算して1年を超えない範囲内において その保全指定の期間を定めます(2項)。

② 保全指定期間の延長の審査
 内閣総理大臣は、保全指定の期間(保全指定の期間が延長されている場合には、当該延長後の期間)が満了する日までに、 保全指定を継続する必要があるかどうかを判断し、継続する必要があると認めるときは、 1年を超えない範囲内において保全指定の期間を延長することができます(3項)。
 内閣総理大臣が保全指定を継続する必要があるかどうかを判断する場合は、保全審査における以下の手続きが準用されます(4項)。

(a) 特許出願人その他関係者からの資料の提出、説明(準67条2項)

(b) 国の機関による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条3項)

(c) 国の機関以外の者による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条4項第1文)
 この場合、以下の措置が行われます。

・当該専門的知識を有する者に「保全対象発明」の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、 当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならないこととされています(準67条4項第2文)。

・内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。) に「保全対象発明」の内容を開示することができますが、その者に対し、あらかじめ、 開示された対象発明の内容についての秘密漏洩・盗用の禁止義務のあることについて説明した上、 当該開示を受けることについての同意を得なければならないこととされています(準67条5項)。

(d) 関係行政機関の長との協議(準67条6項、同7項、同4・5項)

(e) 国の機関の職員等の秘密漏洩・盗用の禁止義務(準67条8項)
 保全審査に関与する国の機関の職員及び国の機関以外の者で「保全対象発明」の内容の開示を受けた者は、正当な理由がなく、 当該「保全対象発明」の内容に係る秘密を漏らし、又は盗用してはならないこととされています。

③ 保存期間を延長した場合の通知
 内閣総理大臣は、保全指定期間を延長をしたときは、その旨を保全指定の通知を受けた特許出願人 通知後に特許を受ける権利の移転があったときは、その承継人。以下「指定特許出願人」という。) 及び特許庁長官に通知します(5項)。

4.保全指定しない場合の通知(71条)

 内閣総理大臣は、保全審査の結果、保全指定をする必要がないと認めたときは、その旨を特許出願人及び特許庁長官に通知します。

5.保全指定の解除等(77条)

 内閣総理大臣は、保全指定を継続する必要がないと認めたときは、保全指定を解除します(1項)

(1) 特許出願人等への通知

 保全指定を解除したとき又は保全指定の期間が満了したときは、その旨を指定特許出願人及び特許庁長官に通知します(2項)。

(2) 保全指定の解除を判断するときの手続き(3項)

(a) 内閣総理大臣からの求めによる特許出願人等からの資料の提出、説明(準67条2項)

(b) 国の機関による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条3項)

(c) 国の機関以外の者による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条4項第1文)
 この場合、以下の措置が行われます。

・当該専門的知識を有する者に「保全対象発明」の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、 当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならないこととされています(準67条4項第2文)。

・内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。) に「保全対象発明」の内容を開示することができますが、その者に対し、あらかじめ、 開示された対象発明の内容についての保秘・盗用禁止義務のあることについて説明した上、 当該開示を受けることについての同意を得なければならないこととされています(準67条5項)。

(d) 関係行政機関の長との協議(準67条6項、同7項、同4・5項)

(e) 国の機関の職員等の秘密漏洩・盗用の禁止義務(準67条8項)
 保全審査に関与する国の機関の職員及び国の機関以外の者で「保全対象発明」の内容の開示を受けた者は、正当な理由がなく、 当該「保全対象発明」の内容に係る秘密を漏らし、又は盗用してはならないこととされています。


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保全指定の効果

1.特許出願の取下げ等の制限(72条)

 指定特許出願人は、内閣総理大臣からの保全指定を解除した旨の通知又は保全指定の期間が満了した旨の通知を受けるまでの間は、 下記の行為をすることができません。

(a) 特許出願の放棄又は取り下げ(1項)。

(b) 特許出願を実用新案登録出願又は意匠登録出願に変更すること(2項)。


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2.保全対象発明の実施の制限(73条)

 保全指定は、発明に係る情報の流出を防ぐための措置であり、本来、発明の実施を制限することを目的とするものではありませんが、 発明の内容や実施の形態によっては、例えば製品からリバースエンジニアリングによって当該発明の内容が明らかとなってしまうなど、 発明の内容を開示するのと同様の情報流出の効果を生じる場合があります。 そうした形での流出を防ぐため、保全対象発明の実施をする場合には、内閣総理大臣の許可を要するものとしつつ、 許可申請に係る実施により、他の者に発明に係る情報が流出するおそれがない限り、内閣総理大臣は、許可をするものとしています。
 したがって、 例えば、 製品を納める先が厳格なセキュリティの確保された特定の機関に限定され、 そこからの発明に係る情報の流出のおそれがなければ、開示と同様の効果を生じることはないため、実施が許可されることとなります。

(1) 原則

 指定特許出願人及び保全対象発明の内容を特許出願人から示された者その他保全対象発明の内容を職務上知り得た者であって 当該保全対象発明について保全指定がされたことを知るもの(「73条1項本文に規定する者」という。)には、 指定特許出願人が内閣総理大臣の許可を受けた場合を除き、当該保全対象発明の実施をすることはできません(1項)。

(2) 保全対象発明の実施の許可を得るための申請

 指定特許出願人が、許可を受けようとする実施の内容その他内閣府令で定める事項を記載した申請書を 内閣総理大臣に提出します(1項ただし書、2項)。 許可申請をすることができるのは、指定特許出願人のみであるため、発明共有事業者が発明を実施する場合でも、 指定特許出願人が許可申請する必要があります。

(3) 実施許可申請に対する審査

 内閣総理大臣が、「73条1項本文に規定する者」以外の者が保全対象発明の内容を知るおそれがないと認めるとき その他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止の観点から内閣総理大臣が適当と認めるときは、実施を許可します(3項)。
 許可に際しては、保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要な条件を付することができます(4項)。
 内閣総理大臣が許可を判断するために、保全審査における以下の手続きが準用されます(5項)。

① 内閣総理大臣からの求めによる特許出願人等からの資料の提出、説明(準67条2項)

② 国の機関による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条3項)

③ 国の機関以外の者による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条4項第1文)
 この場合、以下の措置が行われます。

・当該専門的知識を有する者に「保全対象発明」の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、 当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならないこととされています(準67条4項第2文)。

・内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。) に「保全対象発明」の内容を開示することができますが、その者に対し、あらかじめ、 開示された対象発明の内容についての秘密漏洩・盗用の禁止義務のあることについて説明した上、 当該開示を受けることについての同意を得なければならないこととされています(準67条5項)。

④ 国の機関の職員等の秘密漏洩・盗用の禁止義務(準67条8項)
 保全審査に関与する国の機関の職員及び国の機関以外の者で「保全対象発明」の内容の開示を受けた者は、正当な理由がなく、 当該「保全対象発明」の内容に係る秘密を漏らし、又は盗用してはならないこととされています。

(4) 実施制限違反に対する措置

① 内閣総理大臣は、指定特許出願人が規定又は許可に付された条件に違反して保全対象発明の実施をしたと認める場合であって、 特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び指定特許出願人に通知します(6項前段)。
 指定特許出願人が「適正管理措置」を十分に講じていなかったことにより、 指定特許出願人以外の者が規定又は許可に付された条件に違反して保全対象発明の実施をした場合も、同様とされます(6項後段)。 「適正管理措置」とは、保全対象発明に係る情報を取り扱う者を適正に管理することその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために 必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置をいいます(75条)

② 内閣総理大臣が、前記①の通知をするときは、特許出願人には、あらかじめ、その理由を通知し、 相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与えられます(7項)。

③ 特許庁長官は、①の通知を受けた場合には、内閣総理大臣からの保全指定解除の通知又は保全指定満了の通知を待って、 特許出願を却下します(8項)。


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3.損失の補償(80条)

(1) 保全指定による損失に対する補償

 指定特許出願人が当該実施について内閣総理大臣の許可を受けられなかったこと 又は許可が条件を付されたことその他保全指定を受けたことにより損失を受けた者は、通常生ずべき損失を補償されます(1項)。

(2) 補償の手続き

① 補償を受けようとする者による請求
 補償を受けようとする者は、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣にこれを請求しなければなりません(2項)。

② 内閣総理大臣による決定・通知
 補償の請求を受けた内閣総理大臣は、補償すべき金額を決定し、これを当該請求者に通知します(3項)。
 内閣総理大臣は、この決定をする場合、以下の措置を行うことができます(4項)。

(a) 内閣総理大臣からの求めによる特許出願人等からの資料の提出、説明(準67条2項)
 内閣総理大臣は、決定のために必要があると認めるときは、特許出願人その他の関係者に、資料の提出及び説明を求めることができます。

(b) 国の機関による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条3項)
 内閣総理大臣は、必要な専門的知識を有する国の機関に対し、決定に必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができます。

(c) 国の機関以外の者による必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力(準67条4、5項)
 国の機関による協力では十分ではないときは、内閣総理大臣は、国の機関以外の専門的知識を有する者に対し、 必要な資料又は情報の提供、説明その他必要な協力を求めることができます(準67条4項前段)。 この場合、以下の措置が行われます。

・当該専門的知識を有する者に保全対象発明の内容が開示されることにより特許出願人の利益が害されないよう、 当該専門的知識を有する者の選定について配慮しなければならないこととされています(準67条4項後段)。

・内閣総理大臣は、必要があると認めるときは、その者(補助者の使用の申出がある場合には、その者及びその補助者。) に保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。)の内容を開示することができます(準67条5項前段)。

・保全指定期間内は、その者に対し、あらかじめ、開示された保全対象発明(保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了したものを含む。) の内容についての秘密漏洩・盗用の禁止義務のあることについて説明した上、 当該開示を受けることについての同意を得なければならないこととされています(4項前段括弧書き準67条5項後段・8項)。

(d) 補償金額の決定に対する不服申立
 内閣総理大臣による補償すべき金額を決定に不服がある者は、その通知を受けた日から6ケ月以内に訴えをもって 補償すべき金額の増額を請求することができます(5項)。 なお、この訴えにおいては、国を被告としなければなりません(6項)。


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4.保全対象発明の開示禁止(74条)

① 発明に係る情報の流出を防止するため、指定特許出願人及び保全対象発明の内容を特許出願人から示された者その他保全対象発明の内容を職務上知り得た者であって当該保全対象発明について保全指定がされたことを知るものは、は、正当な理由がある場合を除き、 保全対象発明の内容を他者へ開示することが禁止されます(1項)。
 「正当な理由」とは、開示することが必要かつ相当である場合をいい、例えば、次に挙げる場合のように、 真に業務上の開示の必要性があり、かつ、開示を受ける側においても適正な管理が担保される場合には、 「正当な理由がある」と認められます。

(a) 同一事業者内で、人事異動に伴う後任者への引継ぎや保全対象発明の実施に関する他部署との検討 といった業務上の情報共有の必要性が認められる場面において、開示する相手が情報保全の観点から適切な者である場合

(b) 発明共有事業者の実施の承認が得られている発明共有事業者 11と共同で保全対象発明を用いた更なる研究を進めるに当たり、 研究に参加する当該事業者の職員に発明内容を共有する場合など、業務上の情報共有の必要性が認められる場面 において、開示する相手が情報保全の観点から適切な者である場合

(c) 保全指定がされた後に特許手続に関与することとなった弁理士に対し、 法第 76 条第 1 項の規定による承認を受けた上で、保全対象発明の内容を伝える場合

② 内閣総理大臣は、指定特許出願人が正当な理由なく保全対象発明の内容を開示したと認める場合であって、 特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び指定特許出願人に通知します(2項前段)。
 指定特許出願人が適正管理措置を十分に講じていなかったことにより、 指定特許出願人以外の者が正当な理由なく保全対象発明の内容を開示した場合も、同様とされます(2項後段)。

③ 内閣総理大臣が、前記②の通知をするときは、特許出願人には、あらかじめ、その理由を通知し、 相当の期間を指定して、弁明を記載した書面を提出する機会を与えられます(3項準73条7項)。

④ 特許庁長官は、②の通知を受けた場合には、内閣総理大臣からの保全指定解除の通知又は保全指定満了の通知を待って、 特許出願を却下します(3項準73条8項)。


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5.保全対象発明の適正管理措置(75条)

① 指定特許出願人は、保全対象発明に係る情報を取り扱う者を適正に管理することその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止 のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置を講じ、及び保全対象発明に係る情報の取扱いを認めた事業者 (「発明共有事業者」)をして、その措置を講じさせなければなりません(1項)。

② 発明共有事業者は、指定特許出願人の指示に従い、①の措置を講じなければなりません(2項)。


6.発明共有事業者の変更(76条)

① 指定特許出願人は、特許出願人以外に当該通知に係る発明に係る情報の取扱いを認めた事業者として 内閣総理大臣に提出する書類に記載した事業者以外の事業者に新たに保全対象発明に係る情報の取扱いを認めるときは、 あらかじめ、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の承認を受けなければなりません(1項)。

② 指定特許出願人は、前項①を除き、発明共有事業者に保全対象発明に係る情報の取扱いを認めることをやめたとき その他発明共有事業者について変更が生じたときは、内閣府令で定めるところにより、遅滞なく、 その変更の内容を内閣総理大臣に届け出なければなりません(2項)。


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特許出願非公開に必要な取り扱い

1.外国出願の禁止(78条)

(1) 原則

 何人も、日本国内でした発明であって公になっていないものが、保全審査に付される発明であるときは、 当該発明を記載した外国出願(外国における特許出願及び特許協力条約に基づく国際出願をいい、政令で定めるものを除く。) をしてはなりません。(1項)
 また、特許出願人が指定特許出願人であるときは、保全対象発明を外国出願するができません(2項)。

(2) 例外

 その発明が下記に該当する場合は、外国出願が許容されます(1項ただし書)。

① 外国出願しようとする者から後記「(5)外国出願禁止に関する事前確認」を受けた特許庁長官が内閣総理大臣の確認を得て、 その発明が公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全に影響を及ぼすものでないことが 明らかである旨の特許庁長官からの回答を外国出願しようとする者が受けた場合(1項本文)。

② 我が国において明細書等に当該発明を記載した特許出願をした場合であって、 当該特許出願の日<注2>から10ヶ月を超えない範囲内において 政令で定める期間を経過したとき(「保全指定」の通知を受けたとき及び当該期間を経過する前に当該特許出願が却下され、 又は当該特許出願を放棄し、若しくは取り下げたときを除きます。)(1項ただ書き)。

③ 特許出願日から3ケ月を超えない範囲内において政令で定める期間を経過する日までに特許出願に係る書類を内閣総理大臣に 送付した旨の特許庁長官からの通知が発せられなかったとき(当該期間を経過する前に当該特許出願が却下され、 又は当該特許出願を放棄し、若しくは取り下げたときを除きます。)(1項ただし書き)。

④ その発明が、特許出願人が下記の通知を受けたときにおける当該特許出願に係る明細書等に 記載された発明であるとき(1項ただし書き)。

(a) 保全審査に付するための特許出願に係る書類を内閣総理大臣に送付しなかった旨の特許庁長官からの通知

(b) 保全審査の結果、保全指定をする必要がないと認めた旨の内総理大臣からの通知

(c) 保全指定を解除又は保全指定の期間が満了した旨の内閣総理大臣からの通知


<注2> 特許出願の日:
 特許出願が次の表の左欄に掲げる出願である場合は、その出願日は、左欄の区分に応じてそれぞれ同表の右欄に掲げる日 (その特許出願が左欄の2以上の区分に該当するときはその該当する区分に係る右欄の日のうち最も遅い日)とします(3項)。

特許法第36条の2第2項に規定する外国語書面出願 当該特許出願に係る特許法第36条の2第2項に規定する翻訳文が提出された日 (同条第4項又は第6項の規定により当該翻訳文が提出された場合にあっては、 同条第7項の規定にかかわらず、当該翻訳文が現に提出された日)
特許法第38条の3第1項に規定する方法によりした特許出願 当該特許出願に係る特許法第38条の3第3項に規定する明細書及び図面 並びに先の特許出願に関する書類が提出された日
特許法第38条の4第4項ただし書の場合(同条第5項に規定する場合を除く。) における同条第2項の補完をした特許出願 当該特許出願に係る特許法第38条の4第3項に規定する明細書等補完書が提出された日
特許法第46条第1項の規定による出願の変更に係る特許出願 当該特許出願に係る特許法第46条第1項の規定による出願の変更の日


(3) みなし特許出願の取り扱い

 特許庁長官は、みなし特許出願(日本を指定国として含む国際特許出願)を受けた場合に、 当該特許出願に係る明細書等に保全審査に付される発明が記載されているときは、その旨を内閣総理大臣に通知します(4項)。

(4) 規定違反に対する措置

 内閣総理大臣は、特許庁長官が特許出願書類を内閣総理大臣へ送付した通知をした特許出願人 (通知後に特許を受ける権利の移転があったときは、その承継人を含む。)が外国出願禁止規定に違反して外国出願をしたと認める場合 又は前記3項の通知に係るみなし特許出願が外国出願禁止規定に違反するものであると認める場合であって、 当該特許出願が却下されることが相当と認めるときは、その旨を特許庁長官及び特許出願人に通知するものとします(5項)。
 内閣総理大臣は、前記通知をするときは、あらかじめ、指定特許出願人に対し、その理由を通知し、相当の期間を指定して、 弁明を記載した書面を提出する機会を与えなければなりません(6項準73条7項)。
 特許庁長官は、前記通知を受けた場合には、内閣総理大臣からの保全指定解除又は保全指定期間満了の通知を待って、特許出願を却下します(7項)。

(5) 外国出願禁止に関する事前確認(79条)

① 特許庁長官への事前確認
 保全審査に付される発明に該当し得る発明を記載した外国出願をしようとする者は、 我が国において明細書等に当該発明を記載した特許出願をしていない場合に限り、内閣府令・経済産業省令で定めるところにより、 特許庁長官に対し、その外国出願が外国出願禁止の規定により禁止されるものかどうかについて、確認を求めることができます(1項)。

② 事前確認の求めに対する取り扱い

(a) 当該求めに係る発明が保全審査に付される発明に該当しないとき
 特許庁長官は、遅滞なく、事前確認の求めをした者に回答します(2項)。

(b) 当該求めに係る発明が保全審査に付される発明に該当するとき
 特許庁長官は、遅滞なく、内閣総理大臣に対し、公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全に影響を 及ぼすものでないことが明らかかどうかにつき確認を求めるものとします(3項)。
 当該確認を求められた内閣総理大臣は、遅滞なく、特許庁長官に回答するものとします(3項)。
 特許庁長官は、内閣総理大臣からの回答を受けた特許庁長官は、遅滞なく、事前確認の求めをした者に対し、 当該求めに係る発明が保全審査に付される発明に該当する旨及び当該回答の内容を回答するものとします(4項)。
 事前確認を求めようとする者は、手数料として、一件につき2万5千円を超えない範囲内で政令で定める額を国に納付しなければなりません(5項)。
 なお、手数料は、内閣府令・経済産業省令で定める一定の場合に現金納付を除き。収入印紙により納付します(6項)。

③ 産業競争力強化法の適用除外
 78条1項の規定(外国出願禁止の規定)は、産業競争力強化法7条の規定(新技術等実証等を実施しようとする者が、主務大臣に対し、 その実施しようとする「新事業活動等」に関する規制について規定する法律及び法律に基づく命令の規定の解釈並びに当該新技術等実証又は新事業活動等に 対するこれらの規定の適用の有無について、その確認を求めることができるとする規定)は適用されません(7項)。
 したがって、外国出願禁止に該当するか否かについては、産業競争力強化方法7条に基づき、主務大臣に確認を求めることはできません。


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2.後願者の通常実施権(81条)

(1) 要件(1項)

① 通常実施権を有する者
 指定特許出願人であって、保全指定がされた他の特許出願について出願公開がされた日前に、 第六十六条第七項の規定(出願公開の保留)により当該出願公開がされなかったため、 自己の特許出願に係る発明が特許法第二十九条の二の規定により特許を受けることができないものであることを知らないで、 日本国内において当該発明の実施である事業をしているもの又はその事業の準備をしているもの

② 通常実施権の内容
 その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定 又は審決が確定した場合における当該他の特許出願に係る特許権又はその際現に存する専用実施権について通常実施権

(2) 通常実施権者からの相当な対価(2項)

 保全指定がされた他の特許出願に係る特許権又は専用実施権を有する者は、通常実施権を有する者から相当の対価を受ける権利を有します。


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特許法等の特例(82条)

1.優先権主張の効力の失効(1項)

 特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願は、 特許庁長官が第69条第4項(内閣総理大臣による保全審査の打切りに基づく特許出願の却下)、 第73条第8項(第74条第3項において準用する場合を含む。) (指定特許出願人による規定違反に対して内閣総理大臣による特許出願却下の認定に基づく特許出願の却下) 又は第78条第7項の規定(外国出願禁止の規定違反に対して内閣総理大臣による特許出願却下の認定に基づく特許出願の却下) によりその優先権の主張の基礎とした特許出願を却下した場合下記の場合には、優先権主張の効力は失います。

2.優先権主張における先の出願の取下げの特例(2項準特許法42条1項)

 特許法41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされた先の出願は、その出願の日から「経済産業省令で定める期間を経過した時」 又は「当該先の出願について、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律第77条第2項の規定による通知を受けた時」 のうちいずれか遅い時に取り下げたものとみなされます。 ただし、当該先の出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されている場合、当該先の出願について査定若しくは審決が確定している場合、 当該先の出願について実用新案法第14条第2項に規定する設定の登録がされている場合又は当該先の出願に基づく全ての優先権の主張が取り下げられている場合には、 この限りではありません。

3.出願審査の請求期限の特例(3項準特許法48条の3第1項)

 保全審査がされた特許出願については、出願日から3年を経過した日又は経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律第77条第2項の規定 による通知を受けた日から3ケ月を経過した日のうちいずれか遅い日までに、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができます。

4.存続期間の特例(4項準特許法67条3項)

 特許権の存続期間を延長することができる期間は、基準日(特許権の設定の登録が特許出願の日から起算して5年を経過した日 又は出願審査の請求があつた日から起算して3年を経過した日のいずれか遅い日)から特許権の設定の登録の日までの期間に相当する期間から、 特許法67条3項各号に掲げる期間及び経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律第70条第1項の規定による通知を受けた日から 同法第77条第2項の規定による通知を受けた日までの期間を合算した期間(これらの期間のうち重複する期間がある場合には、 当該重複する期間を合算した期間を除いた期間)に相当する期間を控除した期間(以下「延長可能期間」という。)を超えない範囲内の期間とします。

5.実用新案登録出願の特例

 当該実用新案登録出願に係る明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に保全対象発明が記載されているときは、 無審査登録の原則に関わらず、その保全指定が解除され、又は保全指定の期間が満了するまで、特許庁長官による実用新案権の設定の登録が禁止されます(5項)。


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勧告及び改善命令(83条)

1.内閣総理大臣による勧告(1項)

 内閣総理大臣は、指定特許出願人又は発明共有事業者が第75条の規定(保全対象発明の適正管理措置)に違反した場合において 保全対象発明に係る情報の漏えいを防ぐため必要があると認めるときは、当該者に対し、同条第1項に規定する措置 (保全対象発明に係る情報を取り扱う者を適正に管理することその他保全対象発明に係る情報の漏えいの防止のために必要かつ適切なものとして内閣府令で定める措置) をとるべき旨を勧告することができます。

2.内閣総理大臣による命令(2項)

① 前記1の勧告を受けた者が正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、 内閣総理大臣は、当該者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができます。

② 前記1、②の規定にかかわらず、指定特許出願人又は発明共有事業者が第75条の規定に違反した場合において保全対象発明の漏えいのおそれが 切迫していると認めるときは、内閣総理大臣は、当該者に対し、前記1の措置をとるべきことを命ずることができます。


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報告徴収及び立入検査

1.内国総理大臣による報告徴収等

 内閣総理大臣は、特許出願の非公開制度の施行に必要な限度において、指定特許出願人及び発明共有事業者に対し、 保全対象発明の取扱いに関し、必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該者の事務所その他必要な場所に立ち入り、 保全対象発明の取扱いに関し質問させ、若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができます。

2.職員による立入検査

 立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければなりません(2項)。
 なお、立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはなりません。


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施行期日

 令和6(2024)年5月1日


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特定技術分野及び付加要件の概要

1.特定技術分野の概要

 (1)~(25)の技術分野について、国際特許分類(又はこれに準じて細分化したもの)に従い規定(令第12条1項各号)

【我が国の安全保障の在り方に多大な影響を与え得る先端技術が含まれ得る分野

(1) 航空機等の偽装・隠ぺい技術

(2) 武器等に関係する無人航空機・自律制御等の技術

(3) 誘導武器等に関する技術

(4) 発射体・飛翔体の弾道に関する技術

(5) 電磁気式ランチャを用いた武器に関する技術

(6) 例えばレーザ兵器、電磁パルス(EMP)弾のような新たな攻撃又は防御技術

(7) 航空機・誘導ミサイルに対する防御技術

(8) 潜水船に配置される攻撃・防護装置に関する技術

(9) 音波を用いた位置測定等の技術であって武器に関するもの


<以下、付加要件対象分野>(令12条2項)

(10) スクラムジェットエンジン等に関する技術

(11) 固体燃料ロケットエンジンに関する技術

(12) 潜水船に関する技術

(13) 無人水中航走体等に関する技術

(14) 音波を用いた位置測定等の技術であって潜水船等に関するもの

(15) 宇宙航行体の熱保護、再突入、結合・分離、隕石検知に関する技術

(16) 宇宙航行体の観測・追跡技術

(17) 量子ドット・超格子構造を有する半導体受光装置等に関する技術

(18) 耐タンパ性ハウジングにより計算機の部品等を保護する技術

(19) 通信妨害等に関する技術

【我が国の国民生活や経済活動に甚大な被害を生じさせる手段となり得る技術が含まれ得る分野

(20) ウラン・プルトニウムの同位体分離技術

(21) 使用済み核燃料の分解・再処理等に関する技術

(22) 重水に関する技術

(23) 核爆発装置に関する技術

(24) ガス弾用組成物に関する技術

(25) ガス、粉末等を散布する弾薬等に関する技術


※ 上記(1)~(19)、(20)~(25)について、主にどちらの考え方に着目して選定したものであるかを記載


2.付加要件一覧

 (1)~(3)のいずれかに該当する発明であること(令第12条3項各号)

(1) 防衛・軍事

 我が国の防衛又は外国の軍事の用に供するための発明(1号)

(2) 国・国研

 国又は国立研究開発法人による特許出願(国及び国立研究開発法人以外の者と共同でしたものを除く。)に係る発明(2号)

(3) 国の委託等

 以下のいずれかの適用を受けた特許出願に係る発明(3号、4号)

① 日本版バイ・ドール制度(産業技術力強化法17条)
 産業技術力強化法第17条1項第1~4号に規定する条件を受託者が約する場合に、各省庁が政府資金を供与して 行っている委託研究開発(国立研究開発法人等を通じて行うものを含む。)に係る知的財産権について、 100%受託者(民間企業等)に帰属させうる(受託者が特許出願人となりえる)こととする制度

② 科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律22条
 国の委託研究であって、本邦法人と外国法人等が共同して行うものの成果に係る知的財産権について、 国がその一部のみを受託者から譲り受けることができる(国と受託者の共同出願となりえる)とする制度


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参考・引用文献

(1) 特許法の出願公開の特例に関する措置、同法第三十六条第一項の規定による特許出 願に係る明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明に係る情報の適正管理 その他公にすることにより外部から行われる行為によって国家及び国民の安全を損 なう事態を生ずるおそれが大きい発明に係る情報の流出を防止するための措置に関 する基本指針、令和5年4月28日 閣議決定

(2) 経済安全保障推進法の特許出願の非公開に関する制度のQ&A、内閣府

(3) 特定技術分野及び付加要件の概要、内閣府


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