著作権法ー令和5年改正

ホームお知らせ >著作権法ー令和5年改正


 令和5年5月17日、令和5年著作権改正案が参議院本会議で可決され成立し、5月26日に公布されました。
 主要な改正内容を説明します。

1.著作物等の利用に関する新たな裁定制度の創設等

(1) 趣旨

 IT・デジタル技術の発展により、これまで提供できなかった新しい価値が次々に生まれており、デジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組が求められています(デジタルトランスフォーメーション、DX)
 著作権分野においては、市場に流通するコンテンツの多くはデジタル化され、インターネット等を経由した市場が拡大し、ボーダレス化やグローバル化が進んでおり、SNSの普及が個人の多様な創作活動を発展させ、新たな文化の創造やビジネスへの展開が起こるとともに、今後は「メタバース」と呼ばれる仮想空間におけるコンテンツ利用に期待する動きもあります(第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会報告書)
 このような要請等を踏まえて、著作物の利用円滑化による対価の創出や増加が新たな創作活動につながる「コンテンツ創作の好循環」の最大化が文化振興に資する考えの下、「権利保護・適切な対価還元」と「利用円滑化」の両立を基本とした「著作物等の利用に関する新たな裁定制度」の創設等を行うこととしました(同報告書)。

(2) 制度の内容

① 利用の可否に係る著作権者等の意思が確認できない著作物等の利用円滑化

(a) 未管理公表著作物等(集中管理がされておらず、利用の可否に係る著作権者等の意思を円滑に確認できる情報が公表されていない著作物等)を利用しようとする者は、著作権者等の意思を確認するための措置をとったにもかかわらず、 確認ができない場合には、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することにより、裁定において定める期間に限り、当該未管理公表著作物等を利用することができます。

(b) 文化庁長官は、著作権者等からの請求により、当該裁定を取り消すことで、取消し後は本制度による利用ができないこととし、著作権者等は補償金を受け取ることができます。

② 窓口組織(民間機関)による新たな制度等の事務の実施による手続の簡素化

(a) 迅速な著作物等利用を可能とするため、新たな裁定制度の申請受付、要件確認及び補償金の額の決定に関する事務の一部について、文化庁長官の登録を受けた窓口組織(民間機関)が行うことができることとされています。

(b) 新たな制度及び現行裁定制度の補償金について、文化庁長官の指定を受けた補償金等の管理機関への支払を行うことができることとし、供託手続を不要とされています。

(3) 施行期日

 公布日から3年を超えない範囲内で政令で定める日


ページトップへ戻る




2.立法・行政における著作物等の公衆送信等を可能とする措置

(1) 趣旨

 従来でも、著作権等の制限規定により、立法・立法・行政の目的のための内部資料としての著作物等の複製や、裁判手続のための複製は、著作権者等の許諾を得ずに行うことができました(裁判手続等における利用(著作権法42条等))。
 しかし、内部資料として必要となる著作物等の公衆送信等は、著作権等の制限に含まれていなかったので、公衆送信等をすることができず、立法・行政のデジタル化の障害となっていました。
 そこで、立法・行政のデジタル化への対応を著作権法の観点から支えていくために、内部資料として必要となる著作物等の公衆送信や公の伝達を可能とすることとされました。

(2) 内容

① 立法又は行政の内部資料についてのクラウド利用等の公衆送信等

・立法又は行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、必要な限度において、内部資料の利用者間に限って著作物等を公衆送信等できます。

② 特許審査等の行政手続等のための公衆送信等

・特許審査等の行政手続・行政審判手続について、デジタル化に対応し、必要と認められる限度において、著作物等を公衆送信等できます。

(3) 施行期日

 令和6年1月1日


ページトップへ戻る




3.海賊版被害等の実効的救済を図るための損害賠償額の算定方法の見直し

(1) 趣旨

 著作権侵害に対する損害賠償請求に際しては、権利者が損害額を主張、立証する必要があるところ、無体財産権である著作権の場合はその立証が難しいことが少なくないため、著作権法第114条において、以下のような著作権者の損害の立証負担を軽減する規定を置いていました。

(a) 侵害品の譲渡等数量に基づき損害額を算定

(b) 侵害者の得た利益を損害額と推定

(c) ライセンス相当額を損害額として請求

 しかし、上記(a)については、著作権者等の販売等の能力を超える等の数量について、ライセンス料相当額が認められるか、条文上明らかではなく、権利者への十分な賠償、侵害の抑止、訴訟当事者の予見可能性等の観点から立法的解決が求められていました。
 また、(c)については、侵害者のライセンス相当額が、事前に許諾を得て利用している者と同額のライセンス相当額と同じであると、事前に許諾を受けるモチベーションが低下して、著作物利用者間の公平に反し、侵害が横行する事態も想定されます。
 そこで、先行する特許法等の他の知的財産法体系との整合性をとり、著作権者等の被害回復に実効的な対応が可能となるように損害額の算定方法の見直しを行いました。

(2) 内容

① 侵害品の譲渡等数量に基づく算定に係るライセンス料相当額の認定

・侵害者の売上げ等の数量が、権利者の販売等の能力を超える場合等であっても、ライセンス機会喪失による逸失利益の損害額の認定を可能とします。
 損害額を逸失利益の損失と捉えれば、損害額は侵害品の存在により権利者の製品が販売できなくなった数量であるため、本来的には、その最大数量は権利者の販売等の能力となります。
 しかし、著作権者は自己の販売等の能力を超えた分については、他者に許諾することによりライセンス相当額の利益を得ることができます。
 そこで、著作権者の販売等に能力を超える部分の損害については、ライセンス料相当額の損害を認定することとしたものです。

② ライセンス料相当額の考慮要素の明確化

・損害額として認定されるライセンス料相当額の算定に当たり、著作権侵害があったことを前提に交渉した場合に決まるであろう額を考慮できるようになりました。
 著作権侵害を前提とした交渉額を考慮できる旨明記し、ライセンス料相当額の増額を図ることとしたもものです。

(3) 施行期日

 令和6年1月1日


ページトップへ戻る




1 デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念は、2004年にスエーデンのウメオ大学エリック・ストルターマン教授によって提唱され、「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」とされています(総務省HPより)。

2 第22期文化審議会著作権分科会法制度小委員会 報告書(令和5年1月)


ページトップへ戻る


ホームお知らせ >著作権法ー令和5年改正