権利行使

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1.民事上の請求

(1) 差止請求

 著作者、著作権者、出版権者、実演家、著作隣接権者は、著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権、著作隣接権の侵害者、侵害のおそれのある者に対して侵害の停止、その予防を請求することができます。
 また、その請求をするに際して、侵害行為組成物、侵害行為による作成物、侵害行為に供された専用機械・器具の廃棄等の侵害の停止・予防に必要な措置を請求できます。
 差止請求(権)は、後記「損害賠償請求」と異なり、請求の要件として「故意、過失」が必要とされず、侵害行為組成物や侵害行為による作成物の廃棄等が認められているため、非常に強力な権利となっています。

① 水際措置

 著作権・著作隣接権侵害物品は輸入禁制品とされ(関税法69条の11第1項9号)、税関庁は侵害物品の没収・廃棄、積み戻しを命ずることができます(同法同条第2項)。 また、侵害物品を輸入した者は、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金(併科も可能)が科されます(同法109条第2項)。

② 共有権利の場合

 権利が共有の場合には、差止請求は、各共有者が単独で請求することができます。
 前記の差止請求と異なり、損害賠償請求の場合には、侵害行為に「故意、過失」があることが必要があります。 権利(発生)が公示される特許権等と異なり、著作権は創作と同時に発生し公示されないため、過失の推定はされません。したがって、侵害者に過失のあることは、原則として権利者が立証する必要があります。

(2) 損害賠償請求

 民法の不法行為(侵害行為)による受けた損害の賠償請求となります(民法709条)。  前記の差止請求と異なり、損害賠償請求の場合には、侵害行為に「故意、過失」があることが必要があります。 権利(発生)が公示される特許権等と異なり、著作権は創作と同時に発生し公示されないため、過失の推定はされません。したがって、侵害者に過失のあることは、原則として権利者が立証する必要があります。
 著作権は無体財産権であるため、物権と異なり、毀損等による積極的な損害が少なく、逸失利益、消極的損害等が主体となりますが、そのような消極的な損害については、因果関係等から損害額の算定、立証が困難なことが多くなります。
 そのため、著作権法では、訴訟において権利者の立証負担の軽減のため、損害額の推定、利用両相当額の請求、軽過失の参酌、計算鑑定人への説明義務、相当な損害額の認定等の規定を設けています。
 なお、権利が共有の場合には、自己の持分について損害賠償請求することができます(117条)。

(3) 不当利得返還請求

 侵害者が侵害により利益は受けたときは、著作権者等は侵害者の得た利益の返還を請求することができます(民法703条等)。 一般的には、侵害者は著作権等侵害により著作権者に支払うべき(許諾)使用料の支払いを免れたという利益を受けているので、その使用料相当額が返還請求することができます。
 不当利得返還請求は、一般的に、損害賠償請求と選択的に請求することができますが、損害賠償請求の消滅時効が3年と短いのに対して不当利得返還請求の消滅時効が5年(権利者が権利を行使することができることを知った時からの期間)又は10年(権利を行使することができる時からの期間)(2020年4月1日以降に発生した不当利得返還請求権の場合)であるため(民法166条1項)、損害賠償請求できる期間が経過してしまった場合には、不当利得返還請求することになります。
なお、2020年4月1日より前に発生した不当利得返還請求権の場合の諸滅時効は、請求できる時から10年です(改正前の民法167条1項)。ちなみに、2020年4月1日は、平成29年改正民法の施行日です。
 権利が共有の場合には、自己の持分について不当利得返還請求することができます(117条)。

(4) 名誉回復等の措置請求

 著作者・実演家は、故意又は過失により著作者人格権・実演家人格権を侵害した者に対して、著作者・実演家であることを確保する措置、著作者・実演家の名誉・声望を回復するための措置を請求することができます(115条)。
この名誉回復等請求は、損害賠償に代えて又は損害賠償請求とともにすることができます。
 なお、著作者・実演家の死後は、その遺族が名誉回復等の措置請求をすることができます(116条)。


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2.刑事罰


 特許権等の他の知的残権権の侵害が主として事業者により行われるのに対して、著作権侵害は書籍や音楽等の無断複製等、一般人(個人)によりなしうることから、他の知的財産権侵害に比べて多くなっています。特に、IT化の進展により誰でも容易になしうる状態になっており、しかも権利者の受ける不利益も拡大しています。
 そのため、刑事罰も、著作権侵害の拡大等も考慮して順次拡大しています。

(1) 著作権等侵害罪(119条)

 著作権等侵害罪は、侵害の内容により、刑罰の重さが異なります。
 本罪は、特に断らない限り親告罪です。

① 10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金(併科も可能)(119条1項)

(a) 対象者:著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(後記(b)に該当する者を除く)

  本著作権等侵害罪のうち、この侵害者のみが、他の種類の侵害者に比べて刑罰が重くなっています。平成18年改正により強化され、懲役刑は窃盗と同じとなり、罰金は窃盗の50万円よりはるかに高額です。 これにより知的財産権侵害罪は世界でも最も重罰となっています(中山信弘「著作権法」2010年2月20日、有斐閣)。
 なお、下記の行為の対価として財産上の利益を受ける目的、有償著作物等の提供等により著作権者等の得ることが見込まれる利益を害する目的で、下記の行為を行う場合は、非親告罪となります(123条2項)。

(イ) 有償著作物等について、原作のまま複製された複製物を公衆に譲渡・公衆送信を行うこと
 ただし、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害される場合に限られます。

(ロ) 前記(イ)を行うために複製すること
 ただし、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害される場合に限られます。

(b) 適用除外

(イ)私的使用目的で自ら著作物、実演等を複製した者

(ロ)下記の行為により著作権、出版権又は著作隣接権のみなし侵害を行なった者
 これらのみなし行為を行なった者は一定の場合に次項以下に列挙された刑事罰の対象となります。

(ⅰ) リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツへのリンクの提供行為、リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為(113条2項)⇨後記②又は(3)の適用対象

(ⅱ) 侵害コンテンツであることを知りながらダウンロードする行為(113条3項)⇨後記③の適用対象

(ⅲ) 技術的利用制限手段の回避を行う行為(113条6項)⇨後記(3)の適用対象

(ⅳ) 技術的保護手段の回避又は技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする指令符号を、公衆へ譲渡・貸与し、公衆への譲渡・貸与の目的をもつて製造・輸入、所持、公衆の使用に供し、又は公衆送信・送信可能化する行為(113条7項)⇨後記(3)の適用対象

(ⅴ) 権利管理情報について故意に虚偽情報の付加、情報の除去・改変、それらが行われたことを知ってその著作物等を頒布等をする行為(113条8項)⇨後記(3)の適用対象

(ⅵ) 還流レコードであることを知って、国内頒布目的で、還流レコードを輸入、頒布、所持する行為(113条10項)⇨後記(5)の適用対象

(ⅶ) 頒布目的の侵害複製物輸入、侵害複製物の頒布・頒布目的所持(113条1項)⇨後記②の適用対象

(ⅷ) 侵害されたものであることを知って取得した複製プログラムを業務上電子計算機で使用する行為(113条5項)⇨後記②の適用対象


② 5年以下の懲役、500万円以下の罰金(併科も可能)(119条2項)

(a) 著作者人格権、実演家人格権を侵害した者(著作者人格権、実演家人格権の侵害とみなされる行為を行なった者を除く)(1号)

(b) 営利目的で私的使用のための自動複製機器を公衆に提供した者(2号)

(c) 頒布目的で、輸入の時に国内作成したと仮定すれば侵害複製物となるものを輸入した者(3号)

  みなし侵害の「頒布目的の侵害複製物輸入」を行なった者が該当します。

(d) 権利侵害により作成された物を情を知って頒布等した者(3号)

  みなし侵害の「侵害複製物の頒布・頒布目的所持」を行なった者が該当します。

(e) 違法リーチサイトの運営をした者、違法リーチアプリの提供をした者(4号、5号)

(f) 権利侵害により作成されたプログラム著作物の複製物を、複製物使用権原取得時に情を知って業務上電子計算機で使用する者(6号)


③ 2年以下の懲役、200万円以下の罰金(併科も可能)(119条3項)

(a) 私的使用目的で、著作権・著作隣接権の目的となっている有償の録音・録画(「録音録画有償著作物等」)の違法な自動公衆送信等を受信して行うデジタル方式の録音・録画を、自ら録音録画有償著作物等が違法配信されていることを知りながら行った者(1号)

  私的使用目的の複製等は、著作権の制限により、本来、著作権等の侵害から除外されています。
 しかし、違法アップロードによる海賊版の増大により著作権者等の利益が不当に損なわれる状況が増加し、コンテンツ産業に大きな被害が生じています。
 そこで、平成24年改正により、刑事罰が導入されました。

(b) 私的使用目的で、著作権の目的となっている有償提供の著作物の違法ダウンロードを違法と知りながら継続的・反復的に行なった者(2号)

  令和2年改正により導入された刑事罰です。


(2) 著作者等死亡後の人格的利益の侵害罪(120条)

500万円以下の罰金

 著作者・実演家の死亡後に、著作者人格権・実演家人格権を侵害した者

  本罪は非親告罪です。

(3) 技術的保護手段の回避装置等の譲渡等の罪(120条の2)

3年以下の懲役、300万円以下の罰金(併科も可能)

① 技術的保護手段・技術的利用制限手段の回避する装置・プログラムの複製物を公衆への譲渡・貸与、公衆への譲渡・貸与目的の製造・輸入・所持、公衆の使用に供すること、プログラムの公衆送信・送信可能化を行った者

② 業として公衆からの求めに応じて技術的保護手段・技術的利用制限手段の回避を行つた者

③ リーチサイト・リーチアプリにおいて侵害コンテンツへのリンクの提供行為、リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為を行なった者(113条2項)

④ 技術的保護手段の回避又は技術的利用制限手段の回避を行うことをその機能とする指令符号を、公衆へ譲渡・貸与し、公衆への譲渡・貸与の目的をもつて製造・輸入、所持、公衆の使用に供し、又は公衆送信・送信可能化する行為を行なった者

⑤ 営利目的で、権利管理情報について故意に虚偽情報の付加、情報の除去・改変、それらが行われたことを知ってその著作物等を頒布等をする行為を行なった者

⑥ 営利目的で、還流レコードであることを知って、国内頒布目的で、還流レコードを輸入、頒布、所持する行為を行なった者

  本罪のうち、①と②に該当する者は非親告罪ですが、③〜⑥に該当する者は親告罪です。

(4) 作者名詐称罪(121条)

1年以下の懲役、100万円以下の罰金(併科も可能)

著作者でない者の実名、周知の変名を著作者名として表示した著作物の複製物を頒布した者

  本罪は、著作者等の人格的利益の保護に加えて、公衆に対する欺罔行為の禁止も目的としているため、非親告罪です。

(5) 外国原盤商業用レコードの無断複製の罪(121条の2)

1年以下の懲役、100万円以下の罰金(併科も可能)

以下の商業用レコードを商業用レコードとして複製、頒布、頒布目的で所持、頒布の申出をした者

  ただし、レコードの原盤を最初に固定した日の翌年から起算して70年を経過後に複製等を行なった者は除きます。

① 国内商業用レコード製作業者が、実演家等保護条約等締約国以外の外国のレコード製作者から原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
 本罪は、著作隣接権者であるレコード製作者ではなく、レコード製作者から許諾によりレコード原盤の提供を受けて商業用レコード(市販の目的で製作されるレコードの複製物)を製作する国内の商業用レコード製作業者(レコードリプレッサー)を保護することを目的としています。
 原盤を提供する条約締約国のレコード製作者については、より罰則の重い前記著作権等侵害罪により保護されており、条約締約国以外のレコード製作者については、わが国として保護対象外であるためです。

② 外国商業用レコード製作業者が、実演家等保護条約等締約国以外の外国レコード製作者からの原盤の提供を受けて製作した商業用レコード
 平成3年改正により、保護される商業用レコードの範囲を拡大し、許諾を受けた外国商業用製作業者も保護することとしました。
 前記①と同様に、原盤を提供する条約締約国のレコード製作者については、より罰則の重い前記著作権等侵害罪により保護されており、条約締約国以外のレコード製作者については、わが国として保護対象外であるためです。

 本罪は親告罪です。

(6) 出所不明示罪(122条)

50万円以下の罰金

 著作物・実演等の出所明示義務違反を行なった者

  本罪は、公正な慣行を確保する公益的見地に基づき非親告罪です。

(7) 両罰規定(124条)

 法人等の従業員が、その業務に関して違反行為を行なった場合は、行為者のほか、法人等にも罰金刑が科せられます。
 法人等に対する罰金刑は、著作権、出版権、著作隣接権については原則として3億円、その他は自然人と同額です。


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