著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権の3つの権利から成ります。
これらの著作者人格権は、財産権である著作権と異なり、著作者の一身に専属し、譲渡することができません。したがって、著作者が死亡すれば、著作者人格権は消滅します。
ただし、著作者を公衆に提供し、又は提示する者は、著作者の死亡後も、著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をすることが禁止されます(その行為の性質・程度、社会的事情の変化等によりその行為が著作者の意思に反しないと認められる場合を除く)。
なお、著作者人格権は、譲渡することができないので、著作権を譲渡しても、著作者人格権は著作者に残ります。このため、著作権譲渡後の著作者人格権の取り扱いについては配慮する必要があります。
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未公表の著作物を公表するか否か、及び公表する場合にはその時期と方法を決定する権利です。
下記の場合は、それぞれの行為について公表の同意が推定されますので、特約等がなければ、公表権は及びません。
① 未公表の著作物の著作権を譲渡した場合には、その著作物を公衆に提供・提示すること
② 美術の著作物又は写真の著作物で未公表の原作品を譲渡した場合には、その著作物を原作品による展示の公衆に提示すること
なお、写真の著作物の場合は、印画紙等に印刷した1枚ごとが原作品となるため、譲渡された未公表の写真の原作品を複製等して公衆に提示(公表)することはできません。
また、出版等の他の方法による提示(公表)もできません。
③ 映画の著作物の著作権が映画製作者に帰属した場合には、その映画著作物を公衆に提供・提示すること
未公表の著作物を行政機関等に提出した場合に、行政機関が情報公開法等による「開示決定時」までに別段の意思表示をしなかった場合には、行政機関の長がその著作物を公衆に提供・提示すること同意したものとみなされます。
情報公開法等で不開示とされた未公表の個人識別情報等・法人等の不利益情報等が、以下の情報・文書である場合には、公表権が及びません。
・その不開示情報が人の生命、健康、生活、財産を保護するために公にすることが必要であると認められる情報
・個人が公務員等である場合にその情報がその職務の遂行に係る情報(個人識別情報等に対してのみ)
・行政機関等が、不開示情報が公益上、特に必要があると認めて開示を決定した行政文書
著作物の原作品に、又は著作物の公衆への提供・提示に際し、著作者名を表示するか否か、及び表示する場合には実名を表示するか変名を表示するかを決定する権利です。
通常、著作物の公衆への提供・提示の際に問題となりますが、原作品の場合には、それ以前の段階での表示が問題となることもあります。
また、他人の著作物の利用(翻案、引用等)の際に、その著作物の著作者を表示しなかった問題となることもあります。
著作物の利用者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、既に著作者が表示しているところに従って著作者名を表示することができます。
著作物の利用の目的・態様に照らし、著作者が創作者であることを主張する利益を不当に害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、著作者の表示を省略できます。
例えば喫茶店で流されるバックグラウンドミュージックで利用する場合が該当します。
以下の場合は、氏名表示権は及びません。
①情報公開法により行政機関が著作物を公衆に提供等するときに、既に著作者が表示しているところに従って著作者名を表示する場合
②個人識別情報の削除による著作者名の表示を省略する場合
著作物の内容又は題号について、その意思に反して改変するることを禁止する権利です。
客観的に著作者の名誉・声望を害する事実がなくても、「意に反する」改変が行われた場合に同一保持権の侵害となります。
(ちなみに、実演家人格権の同一性保持権は、「意に反する」ではなく「名誉・声望を害する」改変等が要件となります(後記「著作者隣接権の実演家の権利『実演家人格権(同一性保持権)』」参照)。)
このように、同一性保持権は主観的要素が強く要求されているため、改変する場合には、原則として著作者の同意を求めることが必要となります。
なお、著作者の「名誉・声望を害する方法により著作物が利用」された場合には、みなし侵害により著作者人格権を侵害することとされています(後記「著作権等のみなし侵害『(10) 著作者の名誉・声望を害する方法による著作物利用行為』」参照)。
著作物の利用に際しての著作物の以下の改変には、同一性保持権は及びません。
① 用字・用語等の変更等の学校教育の目的上やむを得ないと認められる改変
② 建築物の増改築、修繕等による改変
③ コンピュータープログラムの実行性確保又は実行性能向上のための改変
④ その他利用の目的・態様に照らしやむを得ないと認められる改変
なお、著作物の改変が著作権等の侵害から除外されることについては、この著作者人格権(同一性保持権)の制限の他に、私的使用等のための翻案等によるもの(後記「著作権の制限『(32) 翻訳、翻案等による利用』」)として規定されており、両者の関係が問題となります。
同一性保持権の制限には私的利用のための改変は文言上含まれておらず、著作権の制限に該当する私的使用のための改変(翻案等)であっても、同一性保持権の侵害と判断される可能性があります。
しかし、家庭内での歌唱・演奏の際の改変、書物改変等の場合に、同一性保持権の侵害とされることは、著作者の受ける不利益と著作物利用者の便宜等も考慮して、権利侵害と評価される違法性に判断されるべきと考えられます(作花文雄「著作権法 制度と政策 第3版」、2008/4/30、社団法人発明協会)。